「金融」を勉強したい人におすすめの本を紹介【為替・国際収支・金融政策】

「金融」を勉強したい人におすすめの本を紹介する。

具体的な投資やファイナンスではなく、「金融」を本質から学べる良書のみを厳選した。

なお、「金融」の学習に入る以前の、お金や経済の知識が不足しているという方や、投資やお金稼ぎを目的としている方は、当ブログの以下の記事のほうが参考になる場合がある。

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それではさっそく、金融を勉強したい人向けの優良書籍を紹介していく。

 

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

著者 :板谷敏彦
出版社:新潮社
発売日:2013年5月24日

現代における「金融」は、非常に抽象度の高いものなので、それがいったいどのようなものか、どういう形で役に立っているのかを、イメージしにくいと思う。

本書は、古代から現代まで、「金融」がどのように発生し、どう役立ってきたかを俯瞰する構成になっている。

「成り立ち」の部分から追っていくので、「金融」というものの漠然としたイメージが、より鮮明に、腑に落ちるように理解できると思う。

「金融」という言葉に囚われずとも、「お金がどのように流れたか」という視点で世界史を捉える、知的興奮に溢れた内容。

純粋に読み物として面白い上に、金融に対しての本質的な理解も深まる、優れた書籍と言える。

教養として「金融」を理解しておきたい人に、強くおすすめできる一冊。

 

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち―

著者 :板谷敏彦
出版社:新潮社
発売日:2012年2月1日

上の本と同じ著者によるものだが、上が「広い視点」で書かれたものなら、こちらは「一つの出来事を詳細に分析した」本。

「日露戦争において、金融がいかに国家の存亡を分けたか?」を描いている。

日露戦争時、日本は戦争を行えるだけの資金がなく、日本国債の信用度もないので資金調達が非常に難しい状況だった。そこで、日銀副総裁だった高橋是清が、「国家存亡をかけた資金調達」という難行に挑む。

壮大なスケールの金融ドラマが繰り広げられていたことがわかったし、「司馬遼太郎」や「池井戸潤」の小説でよくやっているように、ドラマ化や映画化されてもいいような内容だと思った。

純粋にめちゃくちゃ面白いので、多くの人におすすめしたい良書。小説のように読み進めることができる。

金融を勉強したい人にとっても、間違いなく有用な内容が詰まっている。

 

12大事件でよむ現代金融入門

著者 :倉都康行
出版社:新潮社
発売日:2012年2月1日

金融の勉強の難しいところは、概念を学んでも、それが実際の場でどのように動いているのかイメージしにくいことだ。

本書は、実際に大きく世間を揺らした「経済危機」や「金融危機」の事例分析であり、「いったい何が起こったのか?」「なぜそれほど大事だったのか?」という要因と背景を、わかりやすく解説している。

実際に会った出来事の解説なので、理解しやすく、かつ有意義だ。金融を学ぶための本として、非常に優れた構成と内容になっていると言える。

実のところ、「金融」とは、いまだに多くの人がよくわかっていないものなのだ。だからこそ色んな議論が巻き起こり、混乱し、大事件が発生する。

本書で取り上げられている過去の大事件に類することは、これからも起こるだろう。そのような「金融のビッグニュース」に対して、うまく対処したり、理解して楽しむためにも、本書を読んでおくことの意義は大きい。

 

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

著者 :池尾和人
出版社:筑摩書房
発売日:2010年2月10日

「新書」ではあるが、けっこうガチな、現代の金融の入門書。

ミクロ経済の視点からの金融論の専門家である大学教授がレクチャーする。

具体例よりも、かなり本質的な「論理」による金融の話が書かれている。

要点がまとまっているので、下手な本を読み漁るよりも、これ一冊をちゃんと読んだほうが、しっかりとした理解を得られると思う。

内容はけっこう難しめで、高度な数式などが出てくるわけではないが、本気で取り組まないと最後まで読み通すのは難しいかもしれない。

経済を学んだことがない門外漢が読んでも、得られるものが非常に多い内容だと思う。「情報とは何か」「信用とは何か」という根本的なところから、現代の「金融」を解き明かす。

実際の現場で行われる金融政策も、「理論」と「論理」によって考察され検討されているのだという知的な感動がある。

 

国際金融入門 (岩波新書)

著者 :岩田規久男
出版社:岩波書店
発売日:2009年7月22日

初版が1995年で、新板(本書)が2009年の出版。

時代を経ても色褪せない、原理原則が書かれた本。

なぜ為替が乱高下するのか、国と国の間で物を売買して赤字になったり黒字になったりということが、本質的に何を意味するか?

人々の生活に大きな影響を与えていながらも、本質的な理解が難しい「国際金融」を、素人向けに解説する入門書。

「理論」「仕組み」「歴史」の3つの側面から、国際金融の基礎を解説していく。

新書であり入門書だが、知的強度はかなり高め。ある程度は経済に詳しい人か、知的訓練を積んでいる人でないと、簡単には読めないかもしれない。

 

金融政策に未来はあるか (岩波新書)

著者 :岩村充
出版社:岩波書店
発売日:2018年6月21日

日銀が行う「金融政策」について、ああでもないこうでもないと、色々な議論が巻き起こっている。その議論に参加するためには、ある程度の「金融」の勉強は不可欠だろう。

本書は、日銀出身の大学教授が、「金融政策」の側から金融とは何かを論じたものだ。

著者の意見で面白いのは、現代の金融政策のシステムは、ここ150年ほどの経済成長が続いた状況を前提としていて、経済が縮小してしまったときに為す術がないとのこと。そのため、『金融政策に未来はあるか?』というタイトルになっている。

なかなか体系的に勉強することのない「金融政策」をガッツリ学べる上に、重要な問題提起もある素晴らしい新書。

実務経験と学識に裏打ちされた著者の語り口は見事と言うほかない。

読みやすいが、内容自体はなかなかハイレベル。

 

金利と経済―――高まるリスクと残された処方箋

著者 :翁邦雄
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2017年2月17日

日銀で働き、日銀内部の金融研究者として名を馳せた「翁邦雄」による金融講義。

日銀側からの経済への働きかけの主たるものが「金利操作」だが、いったい日銀はどのような理論と意思決定の元で、日本経済の舵取りをしようとしているのかがわかる本。

「自然利子率」という概念をベースに、なぜ日銀の金融緩和が有効性を失い、経済が長期停滞してしまう理論を解説する。

実データと経済理論が、どのように接合され、政策に反映されているのかがわかる。簡単には読めないが、とても素晴らしい内容。

 

入門テキスト 金融の基礎

著者 :藤木裕
出版社:東洋経済新報社
発売日:2016年3月25日

教科書的な金融のテキストで、基礎(入門)にあたる内容。

前半で、銀行、証券、保険会社の機能と、経済学的な基礎理などを学び、後半で、金融商品価格の決まり方、債権、為替レートの決定理論、グローバル経済における国際収支など、最後に金融政策を学ぶ。

非常に網羅的かつ、初心者に親切な構成と内容になっている。

具体的な常識を学び、それを裏付けする理論を学ぶ、という構成で、とても真っ当に必要なことを学習することができる。

「初学者向けの金融の教科書」として、非常に優れていると思う。

上記で紹介した新書などを読みたい場合にも、まずはここで書かれている内容を押さえておくと理解が進むだろう。

 

現代金融論 新版 (有斐閣ブックス)

著者 :川波洋一、上川孝夫
出版社:有斐閣
発売日:2016年12月9日

人文系の学術的テキストの定評のある有斐閣が出す、「現代金融論」のスタンダードな教科書。

経済学部の学生が金融を学ぶときなどは、本書を使う場合が多いと思う。

新書のようにグイグイ読み進めていきたくなる面白さはないが、バランスがよく堅実な内容。

必要な知識を確認する教科書として向いている。

金融をしっかり勉強したいのであれば、手元に置いておきたい一冊。

 

金融

著者 :内田浩史
出版社:有斐閣
発売日:2016年12月26日

中級者、上級者、実務経験者向けの、「ガチ」な金融のテクスト。

複雑な金融の仕組みを、事例や図表などを多用して、なるべくわかりやすく説明している。

証券会社などで働く上では知っておきたい金融の知識が、本質的なものからテクニカルなものまで、網羅的に解説されている。

基礎的な理論から、最先端のものまで紹介されているので、「こういう概念があるのか……」と眺めるインデックスとしても有用性が高い。

内容は難しいが、ビジュアル重視で紹介されていて、豊富な図表は間違いなく理解の助けになるだろう。

「経済学」のひとつのジャンルとして金融を解説する本はたくさんあるけれど、「金融」に焦点を絞ってここまで解説している本は貴重。

基礎的な部分をある程度は把握してから取り組む内容になる。

 

 

紹介は以上になる。

当ブログでは、ジャンルを問わない教養のための「おすすめ本ランキング」の記事なども書いているので、知的好奇心が旺盛な方は、ぜひ以下の記事も参考にしていってほしい。

おすすめの本ランキング!教養で差をつける書籍(新書・学術書・ビジネス書)を紹介

2018.12.30

 

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