「哲学入門書」のおすすめを紹介していく。
「哲学」と言えば、何か「じっくり考える」というイメージが膾炙しているし、それが必ずしも間違っているわけではないのだが、まずは正確な知識のインプットが必要だ。
人間の考える「アイデア」など出尽くしてしまっているし、新しい哲学的な考えを思いついた気になっても、それは結局「車輪の再発明(昔誰かが言ったことの蒸し返し)」である場合が多い。
「哲学」の勉強がまだそれほどできていない状態ならば、最初に良質な入門書を読んで概要を学んだほうが良い。
この記事では、初心者におすすめできる「哲学を勉強するための入門書」を紹介&解説しているので、よかったら参考にしていって欲しい。
14歳からの哲学入門: 「今」を生きるためのテキスト
出版社:河出書房新社
発売日:2019年3月6日
「まともな内容を語っている」哲学入門書の中で、おそらく最も簡単なものの一つだと思う。
「中学生が考えがちな疑問に答える」という形で、難解な哲学のエッセンスを解析している。
大人が読んでも面白いし、「安直な話をしているわけではない」というのが重要なポイント。ちゃんと本質的に哲学を説明している。
キャッチーな内容でありながら、ちゃんとした哲学への勉強に導いてくれる、良質な入門書。
中学生からの哲学「超」入門―自分の意志を持つということ
出版社:筑摩書房
発売日:2009年7月1日
一般向けの哲学のテキストを数多く執筆している「竹田青嗣」が、中学生でもわかるように書いた、渾身の哲学入門書。
中学生向けの「哲学的な考え方」を語っているが、哲学以外のジャンルの入門書と比較すると、内容はかなりハイレベルに感じるだろう。
「正しく真っ当な」哲学の難しさに直面するための足がかりとなる本。
世俗的な人生哲学に落とし込まれがちな「哲学」という学問が、いかに原理的に考えられているかを実感できる。
「素朴な悩みに対して、哲学的に思考するとはどういうことか?」を体感できる一流の書籍。
入門書とは言え、あなどらずに取り組みたい。
はじめての哲学的思考
出版社:筑摩書房
発売日:2017年4月5日
著者の「苫野一徳」氏は、「竹田青嗣」から学んだ弟子であり、哲学の読み解き方も非常に似ている。
著者は教育関連に関心が深いようで、説明の仕方も優しく丁寧だ。
哲学を説明するアプローチはいくつもあるが、「どのように哲学を始めるか」という原理的な思考を、丁寧に辿っていこうとする視点に好感が持てる。
読みやすい新書であり、数ある哲学本の中でも、信頼の置けるクオリティがある。
本書を一冊読めば、原理的な哲学の思考について、理解が深まることは間違いないだろう。
史上最強の哲学入門
出版社:河出書房新社
発売日:2010年4月14日
人気の格闘マンガ『グラップラー刃牙』のパロディを多用しながら、哲学を語る『史上最強の哲学入門』。
バキのネタが豊富だが、原作の知識がなくても普通に読めるようになっている。というより、非常に真っ当な哲学の入門書と言える。
「真理の真理」「国家の真理」「神様の真理」「存在の真理」という4つのカテゴリーにわけて、合計32人の哲学者を紹介している。
まとめ方が非常にわかりやすく、多くの哲学者の考えと、それが生み出された「流れ」の概要を、わかりやすく掴むことができる。
哲学が発展してきた大まかな流れを見渡すことができる、非常に優れた入門書となっている。
哲学マップ
出版社:筑摩書房
発売日:2004年7月6日
哲学を学習するための「哲学のマップ」を提供してくれる本。
何らかの哲学書を読む場合にも「この本はどういう位置づけで書かれているのか?」ということをすぐに調べて把握することができるようになる。
哲学を勉強しようと考えているすべての人にとって、とても有用な手助けとなり得る良書。
本書単体でも読み応えがある解説書になっていて、哲学史の大まかな流れが理解できる。
ややレベルは高めだが、哲学書に手を出してみたい人にとって、非常に実用的なガイドブック。
哲学の謎
出版社:講談社
発売日:1996年1月19日
哲学のインスピレーションを、専門用語ベースではなく、日常的な言葉にして話そうとする、万人のための入門書。
二人の男性の対話形式で話が進んで行くので、小難しい話に慣れていない人にとっても取っ付きやすいだろう。
あくまで「ガイド」であり、本書を読んでも哲学を理解することはできないし、理解できた気にもならない。しかし、哲学の奥深さと、人間が思考するという試みの素晴らしさに、深く心打たれる本ではある。
それぞれのテーマを深く考えるための、まさに入門となる本。
哲学入門
出版社:筑摩書房
発売日:2014年3月5日
「科学哲学」を専門とする著者による、素人向けの哲学の入門書。
「科学」は、「哲学」の一分野から独立し、今や世界を大きく変貌させるほどの発展を遂げたが、その「科学」による知見を使って、もう一度「哲学」を捉えなおそうとする、科学哲学のエッセンスが詰まっている。
「意味」「機能」「情報」「表象」「目的」「自由」「道徳」というそれぞれのトピックについて、科学的、そして哲学的に語っている。
オーソドックスな「哲学入門」とはやや風合いが違うが、科学に溢れた今の時代に生きる人であれば、絶対に読んで損はしない内容。
寝ながら学べる構造主義
出版社:文藝春秋
発売日:2002年6月20日
今や非常に知名度の高い言論人である「内田樹」氏だが、初期の著作は優れたものが多かった。
構造主義(現代思想)について、わかりやすく、噛み砕いて説明してくれる本。
「過去の哲学の流れ」側からではなく、「現代的な問題」の側から「構造主義」を説明しているので、哲学的な知識がまったくない人でも読み通すことができる、まさに入門書。
「卓抜な語り口」は、流石の一言。
深く体系的に理解できる本ではないが、数多くの「知的興奮」と「納得」をもたらしてくれる、読書と思想の喜びが詰まった本。
哲学や現代思想への関心の呼び水として、非常に優れた新書となっている。
現代思想の冒険
出版社:筑摩書房
発売日:1992年6月1日
「竹田青嗣」による、現代思想の入門&解説書。
上で紹介した「内田樹」の本と比べて、そこそこガチな内容なので、読み通すにはやや体力がいる。
これまでの哲学の流れを最初から踏まえた上で、現代思想(構造主義を始めとする現代哲学)を解説している。
著者は、「現代思想」や「ポストモダン思想」に対して懐疑的な立場だが、それでも解説しているというのが面白い。
キャッチーな哲学を原理的な視点から捉えることのできる、優れた入門書。
現代思想の教科書
出版社:筑摩書房
発売日:2010年5月10日
現代フランス思想を専門的に学び、「記号論」「メディア論」にも造形の深い著者による、現代思想講義。
放送大学の講義をまとめたものとのことだが、とても優れた「哲学&現代思想」の入門書になっている。
言語、ナショナリズム、メディア、テクノロジーの発展といった、多くの人がSNSやブログなどで語るようなトピックの話について、哲学的な裏付けのもとに語っている。
抽象的なテーマから実践的なテーマへの「接続」が素晴らしく、「実践的(アクチュアル)なテーマを哲学によって語ること」について、お手本のような実践が見られる。
「哲学を学ぶことが、今の問題を考えることに繋がっている」という実感を感じられる良書。
知識や視点だけでなかく、大きなモチベーションをも貰えるであろう最高の入門書になっていると思う。
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