旅行記・紀行文の名作おすすめを紹介【旅エッセイ・冒険譚】

旅行記、紀行文が大好きだ。

文章を追うだけでも、旅の空気を感じるし、場合によっては、実際に自分が足を運ぶ以上のものを感じ取ることができる。

実際の「旅行」は、金と労力が非常にかかるが、旅行記や旅エッセイならばリーズナブルに旅情を体験できる。これも読書の醍醐味と言っていいかもしれない。

今回は、おすすめの「旅行記・紀行文」を紹介していく。

 

深夜特急

著者 :沢木耕太郎
出版社:新潮社
発売日:1986年
地域 :世界一周

日本人作家の「旅行記」で、人気・知名度ともに、間違いなくトップと言えるのが沢木耕太郎の『深夜特急』。

日本人バックパッカーのバイブルのような扱いで、「個人旅行」ブームを生んだともされている。

香港からマカオ、東南アジア、インド、中東、トルコ、ギリシャ、ヨーロッパ諸国と、ほぼ世界一周の旅。全6巻まであるが、文庫本で1冊が安いので、すべて買っても大した値段にならない。まずは1巻から読んでみよう。

旅をした時期は70年代で、まだ情報もほとんどなかった時代の、静かで壮大な旅が描かれている。

文章が読みやすく、著者の豊かな感受性に触れて、文字を追っているだけで旅情が湧き立ってくる。

探究心がありながらも内省的で、旅行会社のパッケージツアーなどではありえない、「個人旅」による憧れを育てることができる一冊。

本書を読めば、旅に出て、旅行エッセイを書きたくなること間違いなしだ。

単に知名度が高いだけじゃない。「旅行記・紀行文」というカテゴリーでは、絶対的におすすめできるシリーズ。

 

何でも見てやろう

著者 :小田実
出版社:講談社
発売日:1961年
地域 :欧米・アジア22カ国

政治運動家である小田実の名前を一躍有名にした著作が、この『何でも見てやろう』だ。

東大を卒業し、予備校講師をしていた小田が、1958年にとあるキッカケで、バックパックによる世界一周の旅に出る。

当時のバックパッカーのイメージを形作り、『深夜特急』の沢木耕太郎などにも大きな影響を与えている。

知的で、それほど読みやすいとは言えない文章だが、やはり「旅行記」という形式の吸引力を感じる。

戦後の日本人による旅行記の先駆けとなり、「当時の日本人から見た世界」が記述された貴重なテキストでもある。

旅行記好きなら、名前だけでも知っておきたい一冊。

 

行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅

著者 :石田ゆうすけ
出版社:幻冬舎
発売日:2007年6月1日
地域 :世界一周

男なら誰もが憧れる(?)自転車で世界一周の旅。

約7年の歳月をかけて、9万5000Kmの自転車の旅を実行し、その体験記を語る。

スケールが大きいが、読みやすく、食べ物の記述とかもすごく美味しそうで、感情が伝わってくる。

全体を通して、自分の身体で世界を移動することに対しての真っ直ぐな憧れが貫かれて、読んでいて楽しくなってくる本。

山あり谷ありで、それなりの長さだけどまったく飽きない。

著者の人柄にも好感が持て、読んでいて気持ちが良い、体当たりの旅行記。

 

ガンジス河でバタフライ

著者 :たかのてるこ
出版社:幻冬舎
発売日:2000年11月1日
地域 :インドを始め世界各国

テレビプロデューサーで、人気エッセイストとして名を知られている「たかのてるこ」のデビュー作。

テレビ番組の制作の傍ら、旅エッセイを書いている。

女性による旅エッセイの中では、個人的に一番好きなシリーズ。気取らない体当たり精神に好感を持てる。

当ブログで他に紹介している一流の著作と比較すると、文章力などを重視する人にとっては、やや未熟さが目につくかもしれない。

それでも、肩の力を抜いて気軽に読める紀行文で、万人におすすめできる。

「たかのてるこ」のシリーズは、たくさん出ているが、基本的に一冊にひとつの国なので、自分が気になる国のものを読めばいいと思う。

 

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日

著者 :中村安希
出版社:集英社
発売日:2009年11月13日
地域 :ユーラシア・アフリカ大陸

26歳女性が世界各国を回る、約2年間の旅が綴られた旅エッセイ。

「危なっかしい女性の貧乏旅」で、女性ならではの視点が光る場面も多々ある。

それほど文章が上手いとは言えないが、貴重な冒険の道筋がしっかり綴られている。

淡々とした記述の行間に、旅の叙情が伝わってくると感じる場面もあった。

わりと血の気が多く、ちょっと苦手と感じる人もいるかもしれない。

個人的には、かなり楽しめた旅エッセイ。値段が安いのも良い。

 

ラオスにいったい何があるというんですか?

著者 :村上春樹
出版社:文藝春秋
発売日:2018年4月10日
地域 :ラオス、アイスランド、フィンランドなど

村上春樹は、現在の日本で最も著名な小説家と言っても過言ではないが、「小説家よりもエッセイのほうが好き」という読者が少なくない。

どちらかと言えば日本人があまり行かないようなところを好んで旅をして、それを綴ったエッセイ。

文章運びが文句なしに一流なので、とにかく楽しくすらすら読める。

村上春樹ファンの自分としては「やはり素晴らしい」という内容。

熱量高めの冒険譚を求めている人にはおすすめできないが、ゆるい旅エッセイを読みたい人はぜひ!

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2019.08.04

 

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

著者 :若林正恭
出版社:KADOKAWA
発売日:2017年7月14日
地域 :キューバ、東京

大人気お笑い芸人の、オードリー若林による、キューバ旅行記。

オードリー若林の書くエッセイはどれも面白く、エッセイストとしてやっていけるんじゃないかと思うほどだが、本書も非常に良い。

素朴に綴られる旅行記なのだが、ちょっとした物語になっていて、「読んでよかったなあ」という感想が素直に出てくる。

芸人としての著者のファンだけでなく、旅行記好きにも読んでもらいたい一冊。

 

西南シルクロードは密林に消える

著者 :高野秀行
出版社:講談社
発売日:2009年11月13日
地域 :中国、ミャンマー、インド

「幻の西南シルクロード」をたどるため、少数民族が暮らす世界最大の秘境へと踏み込んでいく、最高のノンフィクション冒険旅行記。

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットーのノンフィクション作家「高野秀行」の代表作の一つで、日本語でこれが読めることに感謝したくなるような快作。

自分で体験したいとは思わないが、文字で読んでいるぶんには最高に面白い。

そんじょそこらの旅行記とはわけが違い、著者の教養、語学力、コミュニケーション能力が圧倒的。

百戦錬磨の高野秀行でしか成り立たなかった、極限の冒険企画。

めちゃくちゃおすすめなので、ぜひとも読んで欲しい!

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2019.08.05

 

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

著者 :角幡唯介
出版社:集英社
発売日:2012年9月20
地域 :チベット

チベット、ツアンポー川流域に、「空白の五マイル」と呼ばれる伝説の地があった。全身全霊をかけて未踏の地に挑む、ノンフィクション冒険記。

「探検家」という字面だけでもテンションが上がってしまう自分にとっては、最高の本だった。

現代でも「未踏の地」というものがあるのかと感心したが、実際にそこに挑戦し、それを文にするという素晴らしい仕事が成し遂げられた。

臨場感や迫力を文章で伝えようとする意気込みと筆力にも賞賛を送りたい。

著者の角幡唯介は、「現代の冒険家」とも言われている。早稲田大学「探検部」の出身で、高野秀行の後輩にあたる。

手に汗握る冒険モノが読みたいという方には本書をおすすめする。ただ、これは小説ではなくノンフィクションだ!

 

バッタを倒しにアフリカへ

著者 :前野ウルド浩太郎
出版社:光文社
発売日:2017年5月17日
地域 :アフリカ

最近読んだ旅行記・滞在記モノの中で、一番面白かった。

農学博士を持っているガチガチにアカデミックな研究者が、研究者として一発当てるため、野生のバッタを追い求めてアフリカへ旅立つ。

「バッタの食害」の解決策を探す研究者のものだが、とにかくめちゃくちゃ面白い!

「旅行記」というよりは、目的を持って異文化の中に滞在する奮闘記であり、科学ノンフィクションだが、あまり細かいことはこだわらず、とにかく読んで欲しい!

読みやすく、楽しく、知的で、あらゆる読書の楽しみが詰まった、ジャンルを問わずおすすめしたい神本。

これほどの内容のものを新書で気軽に買って読めることに感謝するべきだ。

 

 

旅行記・紀行文のおすすめは以上となる。

当ブログでは、「ジャンルを問わないおすすめ本ランキング」などの記事も書いているので、よかったらそれも見ていってもらいたい。

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