面白かった小説ランキング!おすすめを厳選して紹介【現代作家・純文学】

「おすすめの小説」を、ランキング形式で紹介していく。

適当な人気の小説を並べていくのではなく、ちゃんと自分で読んで面白いと思った小説のみを厳選して紹介している。

けっこうガチな小説ランキングだと思うので、小説好きの人はチェックしてみてほしい。

 

『狭小邸宅』

著者 :新庄耕
出版社:集英社
発売日:2015年2月25日

一般的に、「営業の仕事は大変だね」というイメージがあるが、「ヤバい営業」を描いた小説。

有名大学を出たものの、特に就職先にこだわらず、「売れればすべて」という不動産会社に就職した主人公が、めちゃくちゃ罵られながらも頑張る……という話。

「ブラック企業」の描写が凄まじく、セリフ回しなどにも勢いがあって、読んでいてどくとくの爽快感とグルーブ感がある。ヤバい企業の内部を覗くドキュメンタリーを読んでいるようでもある。

不動産営業のやり方なども詳しく描いていて、しっかりと取材を行っていることもわかる。ちゃんとリアリティがあるので、心の弱い人や、ブラック企業を経験したことがある人は、注意して読んだほうがいいかもしれない。

すばる文学賞の受賞作となる短い小説で、値段も安く、一気に読み通すこともできる。

著者の次回作も読んだことがあるが、「社会的システムと地続きになった人間の闇」を描くのが上手い。

刺激が欲しい人、ブラック営業職を覗いてみたい人におすすめ!

 

『クリムゾンの迷宮』

著者 :貴志祐介
出版社:KADOKAWA
発売日:1999年4月9日

数々の作品で映画化、ドラマ化などを果たしている超人気作家の「貴志祐介」。

わかりやすい設定と、先が気になる展開、どんどん読み進めたくなるスピード感で、人気になるのも頷ける。

『クリムゾンの迷宮』は、「バトル・ロワイアル」的なデスゲームに巻き込まれた人たちの話。

設定も台詞回しも描写も、チープなのだが、そのチープさがいい味を出している。

わりと長めの長編だが、上下巻に別れることもなく、文庫版は長さに対して価格も安い。

とても気楽に読めるので、娯楽小説を求めている人におすすめしたい。描写などはけっこうグロいので注意。

 

『NHKにようこそ!』

著者 :滝本竜彦
出版社:角川書店
発売日:2002年1月

『NHKにようこそ!』は、コミックやアニメが有名だが、実は原作が小説だ。

ひきこもりの元に美少女がやってくるという、まさにライトノベルな内容なのだが、なんとも言えない切なさといじらしさがあって、とても好きな作品のひとつ。

アニメ版は、EDテーマ「もどかしい世界の上で」などの神曲なども相まって、本当に最高のクオリティなのだが、原作もこれまた良い。

「社会に馴染めないオタク男性」の心を打つものがあるので、そういうのを求めている人にはおすすめ。

ぜひ原作を読んでみてほしいし、漫画版やアニメ版を知らなかった人も、この小説版から読んでほしい。読みやすいし面白く、「原作ならではの良さ」がある。

著者自身のひきこもり体験がベースになっている作品で、当時は「ひきこもり」も、それほど社会に認知も許容もされていなかった。社会に大きな影響を与えることになった一冊だと思う。

 

『悪童日記』

著者 :アゴタ・クリストフ
翻訳 :堀茂樹
出版社:早川書房
発売日:1986年2月

「アゴタ・クリストフ」は、ハンガリー出身の作家で、スイスに亡命し、フランス語が使われているエリアで生活した。

母語ではない、後天的に身につけたフランス語で、世界的な作家になった。

『悪童日記』は、ある種のたどたどしさが、文章の凄みを生み出していて、それを日本語にする翻訳者の表現力も見事。

「大きな町」や「小さな町」という、固有名詞が出てこない童話のような世界観で綴られ、過酷な戦時下を生き抜く双子の子供を描く。

双子の子供の名前は「リュカ」と「クラウス」というのだが、これは糸井重里にも大きな影響を与えて、人気のゲーム『MOTHER3』の主人公たちの名前にもなった。

『ふたりの証拠』や『第三の嘘』は、続編に当たるので、本書『悪童日記』から読むことをおすすめする。

多くの人にとって、大きな衝撃を受ける一冊となるだろう。

 

『わたしの名は赤』

著者 :オルハン・パムク
翻訳 :宮下 遼
出版社:早川書房
発売日:2012年1月25日

舞台は、1591年のオスマン帝国の首都イスタンブル。

細密画師の殺人を巡るミステリーと、大都市で繰り広げられる恋愛を、多層的に描く。

日本とはかなり縁の遠い、イスラム世界の、オスマン帝国の話だが、それゆえに多くの教養を得られるだろう。

本書は、『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』と同じように、物語の中で物語が語られる「枠物語」の形式をとっている。

「オルハン・パムク」は、現代トルコを代表する小説家で、トルコ人初のノーベル文学賞受賞者。

中でもこの『わたしの名は赤』は、絶大な評価を得ている。

歴史的な描写や美術的な描写が多く、そういう点では読みにくくも感じるが、スケールの大きな世界にどっぷり浸かることのできる、最高の文学。世界的な評価も納得だ。

 

『旅のラゴス』

著者 :筒井康隆
出版社:徳間書店
発売日:1989年9月30日

自分の世代の多くの読書家が、「筒井康隆」に親しんできたが、最初に何をおすすめするかというと、この『旅のラゴス』が一番良い気がする。

「文明が荒廃し、人々が超能力を獲得しだした世界」という、ある意味でわかりやすく、どこか突拍子のない世界が舞台。

様々なことを体験しながらも、ひたすら旅を続ける主人公「ラゴス」の生涯を描く。

なんとも掴みどころがなく、それでいて魅力に溢れる作品。こういう作品を書けるのが筒井康隆のスゴさだと思う。

短い小説なのだが、とても壮大な物語を読んだような読後感がある。

普段読書をしない人にも、エンタメ小説としておすすめできる。

 

『コインロッカー・ベイビーズ』

著者 :村上龍
出版社:講談社
発売日:1980年10月28日

まだ日本文学が勢いを持っていた時代の傑作。

村上龍は、様々な意欲的な作品を書き続けてきた作家だが、本作は比較的初期の作品にあたる。

文章のスピード感がすごい!

昨今の芥川賞作家などの文章を見ていても、何言ってるのかよくわからない、エネルギーのない文章が目立つが、このころの村上龍は、スピード感と力強さがハンパない。

どうしようもない快楽と苦痛を描きながら、なぜか人を元気づけてくれるような小説。文章自体がとてつもないエネルギーを持っている。

混沌とした小説だが、文章が好きな人なら読んで損はない。

 

『三体』

著者 :劉慈欣
翻訳 :大森望、光吉さくら、ワンチャイ
出版社:早川書房
発売日:2019年7月4日

オバマ元大統領や、マーク・ザッカーバーグに絶賛されて、世界的なベストセラーになっている中国SF。

日本語に翻訳され出版されたのが2019年と、けっこう出遅れた感じだが、日本でも数年に一度レベルの大ベストセラーになっている。

めちゃくちゃ売れているけど、読みやすいエンタメ小説というわけではなく、けっこう知的なSF。ただ、サスペンス要素もあるストーリーが非常に面白く、最初は読みにくく感じるかもしれないが、ハマるとあっという間に読み終わる。

凄惨な「大文化革命」と謎のVRゲーム「三体」が交錯し、ユニークかつ知的なモチーフが頻出する。非常に豊かな読書体験を与えてくれて、世界的なベストセラーに相応しい内容だと思う。

文学性や社会性がありながら、核となる部分は「SF(サイエンス・フィクション)」なのだが、科学に対する敬意と憧憬を深く感じて、「これが2000部以上も売れている中国ってすごいな」と思ってしまう内容。

三部作あるうちの一部しかまだ日本語訳されていないが、日本でもすでにベストセラーになっていて、二部、三部の翻訳もいずれ出版されるだろう。

ここ数年の小説界隈における、最大のビックウェーブだが、乗っておく価値は間違いなくある一冊。

話題の中国ハードSF、『三体』の正直な感想と解説【レビュー・ネタバレ配慮】

2019.10.11

 

『服従』

著者 :ミシェル・ウエルベック
翻訳 :大塚桃
出版社:河出書房新社
発売日:2015年9月11日

ミシェル・ウェルベックは、村上春樹と並んで、世界的に読まれている現代作家だ。

いろいろな意味でヤバい作者であり、ヤバい小説だ。イスラム教を批判するフランス人作家で、友人がイスラム教徒に殺害されたり、テロを恐れて警察の保護下に入ったりしている。

『服従』は、「ムスリムがフランスの大統領になる」2022年の近未来を描く小説。その騒乱の最中で揺れ動く、大学教授の主人公の心情を描く。

読んだことがない人が、ウェルベックの説明だけ聴くと、「百田尚樹のさらにすごいやつか」というイメージを抱くかもしれないが、全然そんな感じではない。

筆致は深い文学性を讃え、内省的で悲観的。

「過激さ」だけではないからこそ、ウェルベックがここまで世界中で読まれ、愛されるのだろう。

フランスの時事ネタなどがたくさん出てきて、日本で生活している人からすると読みにくいが、そういう部分も色々含めて勉強になる。

知的興奮を得られ、価値観が揺さぶられる。「読書」らしい楽しみ方ができるという意味では、ウェルベックの作品は期待を裏切らない。

ミシェル・ウエルベック『服従』ヨーロッパ的知性の死を描いた衝撃的な問題作【感想・レビュー】

2019.11.12

 

『告白』

著者 :町田康
出版社:中央公論新社
発売日:2005年3月25日

町田康は、もともと「町田町蔵」というパンク歌手もやっていて、顔も整ってる小説家。女性からはさぞモテるだろうと思われる。

ただ、作風は奇抜。文章がめちゃくちゃ上手く、クセになるような独特のリズム感を作り出す。そんな町田康の小説の中でも、『告白』は最高傑作だと思う。

明治時代に実際に起きた殺人事件「河内十人斬り」をモチーフにして、「人はなぜ人を殺すのか」を問う。

「ん〜時代物は別に好きじゃないし、なんかあんまりモチーフに惹かれないなあ」と思った人にこそ読んで欲しい。良い意味で想像を裏切られるだろう。

文章を読む喜びに溢れた、「小説だから可能な芸術」の到達点を感じた。文の中に入り込み、主人公と自分の思考が一体化してしまうかのような没入感で、「人殺し」へと向かっていく。

あらすじがわかっていても、何度も読み返したくなる魅力にあふれている。

文章が好きな人、小説が好きな人なら、一度は手にとってみるべき傑作だと思う。文体が突き抜けているので、合う人と合わない人がいるであろうことを加味してもなお、超おすすめ!

 

 

「おすすめの小説ランキング」は以上。

自分は、小説だけじゃんかう、新書や学術書を読むのもけっこう好きで、「小説以外のおすすめの本ランキング」の記事も書いている。

おすすめの本ランキング!教養で差をつける書籍(新書・学術書・ビジネス書)を紹介

2018.12.30

教養を身に着けたい人、本好きの人は、ぜひ「おすすめ本ランキング」のほうも読んでいってもらいたい。

 

「おすすめ漫画ランキング」なども書いている。本記事が参考になったという人なら、漫画のほうも波長が合うかもしれない。

「おすすめの漫画ランキング」をすべて感想&レビューつきで紹介【2019年】

2019.10.24

 

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