村田沙耶香『コンビニ人間』100万部超えの人気「純文学」作品の感想&レビュー

村田沙耶香の『コンビニ人間』は、芥川賞を受賞し、100万部突破、数多くの国に翻訳されている、大人気の純文学小説だ。

最近の「純文学」で、ここまで人気になった作品は珍しい。

コンビニで働く、ちょっとおかしな女性の話。

今回は、『コンビニ人間』の紹介と、感想&レビューを書いていく。

ちょっとズレた女性が主人公

主人公は、ちょっとズレているというか、まあそこそこヤバい女性なのだけど、そういう人の内面を静かに描く筆致が良い。

36歳女性の主人公「古倉恵子」は、子供のころ、喧嘩をしている男子を止めるために、スコップで頭を殴った。

「誰か先生呼んできて!」
「誰か止めて!」
悲鳴があがり、そうか、止めるのか、と思った私は、そばにあった用具入れをあけ、中にあったスコップを取り出して暴れる男子のところに走って行き、その頭を殴った。
周囲は絶叫に包まれ、男子は頭を押さえてその場にすっ転んだ。頭を押さえたまま動きが止まったのを見て、もう一人の男子の活動も止めようと思い、そちらにもスコップを振り上げると、
「恵子ちゃん、やめて! やめて!」
と女の子たちが泣きながら叫んだ。
走ってきて、惨状を見た先生たちは仰天し、私に説明を求めた。
「止めろと言われたから、一番早そうな方法で止めました」
先生は戸惑った様子で、暴力は駄目だとしどろもどろになった。
「でも、止めろって皆が言ってたんです。私はああすれば山崎くんと青木くんの動きが止まると思っただけです」
先生が何を怒っているのかわからなかった私はそう丁寧に説明し、職員会議になって母が呼ばれた。
なぜだか深刻な表情で、「すみません、すみません……」と先生に頭を下げている母を見て、自分のしたことはどうやらいけないことだったらしいと思ったが、それが何故なのかは、理解できなかった。

なかなかに危ない。

作中では具体的に言及されていないが、もし精神科にいけば、ASDなど「発達障害」の診断を下されたかもしれない。

それからも彼女は「人の気持ちがわからない」状態だったのだが、コンビニ店員になることで、自分のあり方を確立する。

大人になってからは、ちゃんと自分のおかしさを自覚して、なるべく表に出さないようにするほどには、発達している。

それでも、他の人とのコミュニケーションはうまくいかない。

 

コンビニと一体化するほど働き続ける

主人公の古倉さんは、人とコミュニケートするのが上手ではないのだが、決められた仕事をキッチリこなし、コンビニバイトとしては理想の人間だ。

毎日働いているせいか、夢の中でもコンビニのレジを打っていることがよくある。ああ、ポテトチップスの新商品の値札がついていないとか、ホットのお茶がたくさん売れたので補充しなくては、などと思いながらはっと目が覚める。「いらっしゃいませ!」という自分の声で夜中に起きたこともある。
眠れない夜は、今も蠢いているあの透き通ったガラスの箱のことを思う。清潔な水槽の中で、機械仕掛けのように、今もお店は動いている。その光景を思い浮かべていると、店内の音が鼓膜の内側に蘇ってきて、安心して眠りにつくことができる
朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になれる。そのことだけが、私を正常な人間にしているのだった。

「コンビニ」というシステムの、非人間的な均一さが、逆に彼女を「まともな人間」にしているという逆説が描かれているように思えた。

古倉さんは、18歳から36歳まで、週5でコンビニのバイトをずっと続けてきた、まさに「コンビニ人間」だ。

友達もいないし、特にやりたい人もなく、恋人もいない人生だが、「コンビニ」だけが彼女の支えとなっている。

そのような古倉さんのもとに、新しいコンビニのバイトとして、「白羽」という男がやってくる。

 

バイトで入ってきたクソな男との同棲生活

様々なものから逃げ続け、「この世界は間違っている」と主張する、新しいバイトの「白羽」。

この男も、なかなかのヤバいやつだ。

「白羽さんは、どうしてここで働き始めたんですか?」
素朴な質問が浮かんだので聞いてみると、白羽さんは、
「婚活ですよ」
とこともなげに答えた。
「へえー!」
私は驚いて声をあげた。今まで、近いからとか楽そうだからとか、いろいろな理由を聞いてきたが、そんな理由でコンビニで働き始めた人に会うのは初めてだった。
「でも失敗だったな。ろくな相手がいない。若いのは遊んでそうな奴等ばかりだし、あとは年増だ」

婚活のためにコンビニバイトを始める男。

まあ自分も、『恋は雨上がりのように』を読んでいたとき、「彼女目的でファミレスで働くのはアリか?」とちょっと考えてしまったので、そういう人がまったくいないわけでもないのだろう。

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2019.10.28

 

『コンビニ人間』に出てくる白羽は、下心を隠す社会性すらも持ち合わせていない。

なんだかんだあって白羽は、古倉さんのアパートに居着くようになる。

「古倉さん、あなたの提案、突拍子もないと思いましたが、悪くないですよ。協力してやってもいい。僕が家にいれば、貧乏人が同棲している、という程度で、見下されはするかもしれないけど、皆、納得してくれる。今のあんたは意味不明ですよ。結婚も就職もしていないなんて、社会にとって何の価値もない。そういう人間はね、ムラから排除されますよ」

ふたりは、「世間を納得させる」ために、ともに暮らそうとする。

実際に、同棲のことを妹に言うと、「お姉ちゃん、本当によかったね。ずっといろいろあって苦労してきたけど、全部わかってくれる人を見つけたんだね……!」と感動される。

同棲相手ができると、周囲から「まとも」と見なされ、家族からも喜ばれる。それが理由で、古倉さんも白羽を泊めようとするのだ。

そのあとふたりがどうなるかは、実際に読んで確かめてみてほしい!

 

読んでみての感想

著者がコンビニで働いていたからか、コンビニのディテールの描写がとてもよく書けていると思う。

日本式の「コンビニ」は、海外でも影響力があり、また日本の外国人労働者の多くがコンビニで働いていることから、複数の国の言葉に翻訳されている。

小説として面白いかというと、「純文学」としてはまあ面白いかな、という感じ。

個人的にそこまで好みではないが、作品として上手にまとまっているし、良くできているのではないかと思った。

読みやすいので、普段はあまり小説を読まないけど、久しぶりに「純文学」に手を出してみたいな、という人におすすめ。

 

『コンビニ人間』の感想&レビューは以上。

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