「イスラム教」を学ぶためのおすすめ本を紹介する。
「イスラム教」と「日本」は、それほど太い接点があるわけではないのだが、だからこそなのか、日本語の解説本が非常に充実している。
どういうわけか、イスラムを専門にしている日本人研究者には、ユニークで優れた知性が多いように感じる。
日本という比較的イスラームから遠い国だからこそ、相対的に捉えた、優れた解説書が生まれるのかもしれない。
名著ばかりなので、イスラム教を学びたいと考えている人は、ぜひ参考にしていってほしい。
目次
イスラーム文化−その根柢にあるもの
出版社:岩波書店
発売日:1981年
日本語で学べる「イスラム教」学習本の中で、もっとも評価が確立されている古典的な名著。
著者の「井筒俊彦(いづつとしひこ)」は、30以上の言語をあやつる言葉の天才で、この他には『意識と本質』などの著作も有名。イスラム以外の宗教にも幅広く深い知識を持ち、海外からの評価も高い。
イスラムを語りながらも、「宗教とは何か?」「法と倫理とは何か?」など、本質的で包括的な視座のもとに書かれた内容。
イスラムを解説する他の新書と比べて、発売年を考えれば当然だが、やや文章などに固さと難解さがある。しかし、十分に読みやすく、かつ内容も一流。
他のイスラム解説書を書いている研究者も、本書を読んでいないわけがなく、日本人がイスラムを考える際の前提となっている。
イスラームの日常世界
出版社:岩波書店
発売日:1981年1月21日
イスラームの教義に従って、市井の人々がどのような暮らしをしているのか、民俗学者が解説。
イスラム教徒の暮らしぶりが伝わってくるし、具体的にどのような生活をしているのか、職業観や家族観などを知ると、よりイスラムを深く理解できる。
理論的に解説された本よりも、「どのような価値観に裏付けられた生活があるのか」という「日常の営み」を解説された本のほうが、本質的に納得できる部分がある。イスラムを知りたい人には特におすすめしたい、長く読まれ続けている名著。
イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化
出版社:講談社
発売日:1994年7月20日
イスラムを理解するための古典とも言えるくらい、高い評価を受けている名著。
歴史から、現代的な部分まで、記述のバランスが良く、これ一冊で「イスラム」の全体像が見えてくる。
エジプトの大学を卒業し、紫綬褒章を受賞した教授による解説で、日本人とは感覚が全然違うイスラムの世界を、的確に解説してくれている。
現代的な新書の体裁で、井筒俊彦の『イスラーム文化−その根柢にあるもの』などよりも記述が読みやすく、最初に読む一冊としても間違いがない。
池上彰の講義の時間 高校生からわかるイスラム世界
出版社:集英社
発売日:2017年10月20日
安定の「池上彰」本。日本語でイスラム教を解説した本の中で、もっとも読みやすいと思う。
イスラムの専門家ではもちろんないけど、「わかりやすさの専門家」ではある。
時勢を踏まえながら、素朴な疑問に的確に答えていく。
難しめの本に抵抗がある人は、本書から読むといいだろう。
イスラーム思想を読みとく
出版社:筑摩書房
発売日:2017年10月5日
現代的な問題を扱いながら、「イスラームはどういう考えをしているのか?」を、日本人にもわかりやすく、かつ深く「読みとく」。
小杉泰の『イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化』と比べて、出た年代が新しいぶんだけ、読みやすく、ホットな問題に触れている。
客観的で誠実な筆致が素晴らしく、近年のイスラム解説系の新書の中では最もおすすめできる一冊。
イスラム教の論理
出版社:新潮社
発売日:2018年2月15日
ツイッターもやっていて、戦闘的な姿勢が目立つ著者による、イスラム解説本。
他の解説書と比較して、ややイスラムに対して懐疑的な見方がされていると思う。というより、日本人の常識や、西洋的な価値観とは相容れない部分を、しっかり書いている。
批判もある内容なので、他のイスラム解説書と併読すると知識が深まるだろう。
イスラームの論理
出版社:筑摩書房
発売日:2016年5月11日
『13歳からの世界征服』や『みんなちがって、みんなダメ』などの著書も人気で、人間味あふれる「イスラムおじさん」である中田考による、イスラム解説書。
日本人のウラマー(イスラム法学者)から、イスラムへの愛に溢れた、イスラムの教えに好意的な内容。
優れた知性が、なぜイスラムに惹かれ、ムスリム(イスラム教徒)になったのか、という視点で読む価値がある。ただ、最初に読む解説書としてはあまり優先度が高くない。
「イスラム教」を学ぶためのおすすめ本は以上。
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