コーヒー豆やコーヒー粉の保存方法、賞味期限、冷凍、おすすめ容器などを徹底解説

コーヒー豆やコーヒー粉は、味や香りが重視されるけど、「時間によってどれくらい劣化するものなの?」と考える人は多いはずだ。

この記事では、大のコーヒーマニアが、コーヒーの保存関連について、徹底的に解説していく。

「コーヒー豆」や「コーヒー粉(レギュラーコーヒー)」の保存方法について調べている人は、参考にしていってほしい。

コーヒー豆&粉の保存方法の基本、何を避けるべきなのか?

要点だけを説明するなら、コーヒー豆やコーヒー粉を保存しておく上で、避けるべきなのは主に以下の4つだ。

  • 水分(湿度)
  • 光(紫外線)
  • 空気(酸素)
  • 熱(高温)

水分と湿度を避けるのが一番大事。コーヒー豆や粉は水分による劣化が最も急激なので、絶対に濡らさないようにしたい。

紫外線を避けるのも大事

また、なるべく空気に晒されないようにし、周囲の温度は低いほうがいい。

これらをまとめると、「気密性の高い容器に入れ、冷暗所で保管」となる。

ジップロックや瓶など、内側と外側の気体が流通しないように密閉された容器に入れてきちんとフタを閉め、直射日光の当たらない、涼しげな場所で保管するといい。

やること自体は以上なのだが、以下では、コーヒーの保存方法や必要な器材について、より詳しく解説していく。

 

コーヒー豆&粉の賞味期限、消費期限

賞味期限と消費期限だが、豆の種類や保存方法によるので、正直なところ何とも言いようがない。一応目安となる日数を解説する。

消費期限

賞味期限」は、美味しく飲める期限のことだが、人によって劣化の許容範囲は異なるだろう。

個人的な感覚(コーヒー好き基準)では、ちゃんと「密閉&冷暗所」で保管していた場合、

  • コーヒー豆の賞味期限は約「1ヶ月」
  • コーヒー粉の賞味期限は約「2週間」

という感じだと思う。

ただ、その期間を過ぎても、特に味に強いこだわりがないのであれば、普通に美味しく飲めるだろう。

メーカーによって設定している賞味期限は違うが、コーヒー豆もコーヒー粉も、だいたい製造から100日前後を賞味期限としているところが多いように思う。

こだわりが強いわけではない、安いメーカーの製品の賞味期限ほど、100日よりも長め設定されている傾向がある。

消費期限

消費期限」は、安全に飲める期限のことだが、これは保存方法にかなり左右される。

コーヒー豆は、基本的に乾燥していて、カビなどは生えにくい。

ただ、保存方法が悪く、湿度の高いところに長く放置されていた場合、健康的な被害がある可能性もある。

ちゃんと冷凍して保存されていた場合、数年は持つだろう。

ただ、味と香りは確実に経年劣化していくので、長期間の保存を前提にしてコーヒーを買うのはおすすめしない。

 

【より詳しく】焙煎後のコーヒーの変化の仕組みを解説

焙煎した後から始まるコーヒーの味の劣化を、より詳しく解説していく。

焙煎後の豆の劣化は、

  • ステイリング
  • 香りとガスの損失
  • 酸敗

に大別される。

ステイリング

ステイリング(stailing)」は、専門用語で「経時劣化、老化」といった意味で、pHが低下して酸っぱくなる現象を指す。

豆の焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンは、水分子と反応すると容易に加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、pHが低下して酸っぱくなる。

この加水分解反応は、水分が多く、高温なほど早く進行する。ドリップ(抽出)した後のコーヒーを放置しておくと、急激な早さで酸っぱくなっていくのはそのためだ。ドリップ後、ホットプレートで保温しているコーヒーでも、数十分で味が劣化してしまう。(言い換えると、淹れてからすぐ飲んだほうが美味しいということであり、素朴に考えれば当然のことだが。)

豆を挽いたりドリップしたりする前の「コーヒー豆」の状態でも、常温で吸湿したときには、1〜2日で違いがわかるくらいに味が変化してしまうので、水分(湿度)を避けることはコーヒー保存において最も重要なのだ。

香りとガスの損失

焙煎した直後から、コーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていく。

コーヒー豆を買ったときの袋には、穴(ガスバルブ)が空いている場合が多いのだが、専門店などでは「へそ」と呼ばれている。これは、外からの空気は入らず、内側のコーヒー豆から出た炭酸ガスだけが抜ける仕組みになっている。炭酸ガスで袋が膨らんでしまわないようにする仕組みだ。

ガスがたくさん抜けてしまったコーヒーは、香りを失い、また豆の組織が開きにくくなるので成分の抽出効率が悪くなる。基本的にこの劣化は避けられないが、気密性の高い容器に保存することで遅らせることはできる。

酸敗

油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度の高い脂肪酸になり、さらに酸化が進むと低級脂肪酸に分解され、油の傷んだような嫌な匂いとpHの低下をもたらす。空気中の酸素と触れ合うことで起こるので、なるべく空気に触れないようにすることで防ぐことができる。

実は、焙煎したコーヒー豆において、酸化による劣化の進行は意外に遅く、違いがわかるくらいの変化は常温で7〜8週間かかると言われている。

気密容器で保存していても、コーヒー豆を取り出すときなど、まったく空気に触れないというのは不可能だが、そこまで神経質になる必要はない。空気に晒されることでの劣化はたいしたことがないからだ。

 

以上までが詳しい説明だが、ソースは、旦部幸博『コーヒーの化学「おいしさ」はどこで生まれるのか(ブルーバックス)』第6章「焙煎の科学」より。ちゃんと知りたい人は本を買って読んでほしい。

詳しい解説まとめ

最重要なのは、水分と湿度を避けることだ。焙煎後のコーヒー豆は水に触れることで抽出が始まり、そのまま放置すると急激に劣化していく。コーヒー豆を取り出すとき、「スプーンが塗れていないかどうか」注意しよう。

解説では言っていないが、紫外線(直射日光)を避ける必要がある。紫外線は細胞の組成を破壊するので、ほとんどの食品や薬品は紫外線を避けたほうがいい。人間だって長時間太陽に晒されると皮膚にダメージを負う。

また、ガス漏れと酸化を防ぐために、空気に触れる状態で保存しておくのもよくない。

基本的に、気密状態にして日光が当たらないところに置けば、保存の条件はすべて満たしている。

冒頭でも述べたが、難しいことはあまり考える必要はなく、「密閉&冷暗所」で保存しておけばそれでいい。

蓋を開けてコーヒー豆やコーヒー粉を取り出すときは空気に触れてしまうが、「酸敗」は進行が遅いので、そこまで神経質になる必要はないだろう。

 

気密状態にするためには?

気密状態」とは、気体の出入りを遮断した状態のこと。「密閉状態」と似たような意味だが、「気密」のほうがより厳重だ。

気密状態にすることで、

  • 吸湿を避ける
  • ガスが抜けるのを防ぐ
  • 酸化を防ぐ

という、コーヒー保存の基本的な条件を満たすことができる。

ジップロック

密閉状態(気密状態)で保存する容器として、一般的に普及しているのは、「ジップロック」だ。

「ジップロック最強説」が人口に膾炙するほど、安価かつ優れた製品なので、持っている人は多いだろう。スーパーやドラッグストアなどどこにでも売っている。

ジップロックの気密性は「完璧」とまでは言えないかもしれないが、それでも十分な性能を誇る。

他に手頃な容器がないのであれば、ジップロックでも全然良いと思う。オシャレ度は低いが、価格が安く一番使いやすい。

また、コーヒーと言えば、「」で保存しているイメージがある。

瓶に関しては、モノによって気密性はピンきりだ。

気密性の高い瓶は蓋が厳重で開けにくかったりと、オシャレ目的以外では、通常の瓶を使うメリットはそれほどないかもしれない。

ただ、他に容器がないのであれば、そこらへんの瓶でも最低限の役割はしっかり果たしてくれる。

これからコーヒー保存用の容器を買おうとしているのであれば、専用の「キャニスター」がおすすめだ。

下の段落でその紹介をしているが、興味がないなら飛ばして読んで構わない。

 

コーヒー保存用の容器(コーヒーキャニスター)が最も手っ取り早い

キャニスター」は、日本では聞き慣れない単語かもしれないが、コーヒーや紅茶など、気密性が求められる食品を保存しておく容器のことを言う。

コーヒーキャニスターは、まさしくコーヒーを保存するために開発された製品なので、今からあえて保存用の容器を買いたいという人なら、迷わずキャニスターを選ぶのがいい。

おすすめのコーヒーキャニスターを、安いものから順に紹介していく。

HARIO (ハリオ) 珈琲キャニスター

メーカー:HARIO株式会社
サイズ:800ml(M)、1000ml(L)
素材:耐熱ガラス
スプーン付属:無し

「HARIO株式会社」は日本の耐熱ガラスメーカー。耐熱ガラス製の商品をたくさん開発していて、グッドデザイン賞も多数受賞している。

耐熱ガラス製の、シンプルかつオシャレなコーヒーキャスターで、通常の「Mサイズ」と背の高い「Lサイズ」がある。蓋の開閉もしやすくて、とても使いやすいデザイン。

汎用性が高いので、コーヒー以外の食品にも自由に使えるだろう。

一方で、密閉性、気密性は、価格相応で、「安いけれど性能はそれなり」といった感じ。

これくらいなら「ジップロック」の箱型のほうが使いやすさでは上だが、オシャレさは魅力。

取り出す用のスプーンがついてこないので、持っていないなら別途買う必要がある。

Coffee Gator コーヒーキャニスター

メーカー:Coffee Gator(コーヒーゲーター)
サイズ:900ml(小)、1300ml(中)、1920(大)
素材:ステンレススチール
スプーン付属:有り

「Coffee Gator(コーヒーゲーター)」は、イギリスのコーヒー機器メーカーで、高いスペックのものをお手頃な価格で販売している。

サイズバリエーション、カラーバリエーションともに豊富で、性能は文句なし。

コーヒーの劣化を全力で抑える徹底防御の仕様。

コーヒーの購入日を設定できる日付表示ダイヤルなど、機能的なオシャレ感もあり、かなりおすすめできる製品。

金属製なので、冷蔵庫や冷凍庫で保存できないことに注意。

OXO 保存容器 密閉 コーヒー&ティー ポップコンテナ

メーカー:OXO(オクソー)
サイズ:900ml、1400ml
素材:AS樹脂、 ABS樹脂、ポリアセタール、ステンレス鋼、シリコン
スプーン付属:無し

「OXO(オクソー)」は、ユニバーサルデザインを掲げるアメリカの企業で、様々な製品を開発している。

コーヒーやお茶を入れる用の保存容器で、冷蔵庫で保存することを前提とした容器だ。

気密性はそれほど高くないが、最初から冷蔵庫で保存するつもりなら選択肢としてアリ。

デザインも無難で、取り出しやすく、使い勝手がとても良い。

ジップロックでも同じことはできるので、価格の高さはネックかもしれない。

Melitta ステンレス キャニスター MJ-2156

メーカー:Melitta(メリタ)
サイズ:800ml
素材:ステンレス、シリコン
スプーン付属:有り

「メリタ」は、ペーパードリップを考案したメリタ・ベンツによって1908年に創業された、歴史あるドイツのコーヒー機器総合メーカー。今なお世界的な影響力を誇る。

コーヒー用ペーパーフィルターやドリッパーなどを売っているが、コーヒー保存用のキャスターも販売している。

伝統と信頼を裏切らないコーヒー好きのための製品。

容量に対してやや割高だが、気密性が高く、蓋の開け締めもしやすい。

 

冷凍庫や冷蔵庫で冷やすことについて

冷蔵・冷凍も、劣化を遅らせるのに効果的で、1ヶ月以上飲まないつもりの豆は、気密性の高い容器に入れて冷凍しておけば、数ヶ月から半年くらいは美味しい状況を維持できるとされている。

冷蔵と冷凍の注意点だが、冷えた豆が温かくて湿った外気にふれるとすぐに吸湿しやすいので、何度も蓋を開けたり占めたりすると、使わないぶんの豆が劣化しやすい。なるべく小分けにしておくのが大事。

また、温度差で結露が発生した場合、その水が万が一コーヒー容器に入り込んでしまうと豆がダメになるので、注意が必要だ。特に「冷蔵庫」は、他の食品の出し入れなどもあり、結露などで豆が塗れやすい。それを考えると、「冷蔵」のメリットよりもリスクが上回りがちだ。

「冷凍」という方法は、コーヒー豆においては万能ではない。例えば「米や肉を冷凍して保存」するのは、電子レンジなどですぐに解凍できて便利だが、コーヒー豆は手間をかけるだけの恩恵がそこまで受けられない。コーヒー豆の味は繊細なものだし、冷凍したからといって、大幅に劣化を遅らせられるわけではない

現実的に、一般的な家庭の冷蔵庫や冷凍庫はスペースに限りがあるだろうし、小分けにしてコーヒー豆を冷凍するのはけっこう面倒な作業だ。

そこまでやるくらいなら、「一ヶ月以内に使い切れるだけの豆を買う」という工夫をしたほうがいい。

こう言ってしまうと身も蓋もないが、保存方法には限界があることを踏まえて、なるべく豆が新鮮なうちに使い切ってしまうのが一番だと自分は考えている。

そもそも論として、コーヒー豆は半年以上も使わずに保存しておくようなものではないのだ。

それでも冷凍庫で保存したい場合は、「フリーザーバッグ」タイプのジップロックが便利だ。

 

コーヒー豆とコーヒー粉(レギュラーコーヒー)の違いについて

コーヒー豆」と「コーヒー粉(レギュラーコーヒー)」の違いだが、「コーヒー豆」を挽いたものが「コーヒー粉」であり、「レギュラーコーヒー」という名称で売られていることが多い。

基本的にこの二つは、どちらも保存方法は同じで、「気密性の高い容器に入れて、直射日光の当たらない冷暗所に保管」だ。

ただ、豆よりも粉のほうが劣化のスピードが早いことには注意しよう。

豆を挽く(砕く)ことで、ガスが抜けて鮮度が落ちる。これはどうしようもなく、コーヒー豆から作った「挽きたて」のコーヒーのほうが基本的に美味しいとされるのはそのためだ。「コーヒーミル」か「ミル付きのコーヒーメーカー」が必要だが、器材さえあれば、豆から挽いたほうが手軽に美味しいコーヒーを飲むことができる。

もちろん、粉だからといって不味いわけでは決してない。コーヒー専門店や喫茶店でも粉から作っているところは普通にある。(もちろん鮮度には気を使っているだろうけど。)

ただ、新鮮な美味しさを保ったまま、家で長期的(2週間から1ヶ月ほど)に保存しておきたいなら、「豆」状態のほうが簡単ではある。

コーヒー豆は酸化には比較的強いが、コーヒー粉にすることで空気に触れる面積が増えるので、酸化にわりと弱くなる。そのため、レギュラーコーヒーの場合は、空気に頻繁に触れるのはできるだけ避けたい。

 

食品乾燥剤、脱酸素剤は有効か?

結論から言うと有効だ。

ただ、上で説明したように、焙煎後のコーヒー豆は湿気には弱いが、酸素には強め。よって、コーヒー豆に使うなら「食品乾燥剤」のほうが優先度が高い。

コーヒー粉は酸素にも弱めなので、「脱酸素剤」も有効になる。

ただ、基本的には、空気に触れない容器にちゃんと保存しておくのが最も大事だ。そのプラスアルファとして、「少し効果があればいいな程度のもの」という認識でいい。多少の効果はあるかもしれないが、必須ではない。

経時劣化は、どれだけ保存に気を使っても進んでいくので、色々と工夫しても限界はある

そこまでやるくらいならば、鮮度の高いうちに豆を使い切るような「買い方」をしたほうがいい。

 

最後のまとめ:結局のところ何をやればいいの?

「ジップロック」や「コーヒーキャニスター」など、気密性の高い容器に保存して、冷暗所で保管、というのが基本であり、ほとんど全て。

2週間から1ヶ月以上は使わないことが確定している豆や粉は、小分けにして冷凍庫で保存しておくことで劣化を遅らせることができる。

ただ、いずれにしても、時間による味の劣化は避けられず、保存方法に凝ったからといって、大幅に質を改善できるわけではない。

2週間から1ヶ月以内に使い切れる量(1人あたり200〜300gが目安)を、定期的に買うのが最も良い。

保存方法について長々と述べておいて恐縮だが、「保存方法」よりも「買い方」を工夫したほうがラクだし効果的というのは事実だ。

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