PS4ソフト「ニーア オートマタ(NieR: Automata)」の、レビュー(ネタバレ無し)と、感想(ネタバレ有り)を書いていく。
前半にネタバレに配慮したレビューを載せる。買おうかどうか迷っている人は参考になると思う。
後半にネタバレを気にしない感想を載せる。途中でちゃんと引き返せるように注意を挿れているので、できればゲームをちゃんとクリアした後に見てほしい。
ニーアオートマタのレビュー(ネタバレ無し)
まずはネタバレ無しのレビューだ。
やろうと思ってる人が参考になるために、各項目を点数付きで採点している。
ただ、あくまで俺個人の評価基準で点をつけているので、異論もあるだろうと思う。そこらへんを加味して読んでくれると幸いだ。
ゲームシステム:80点

一人プレイ専用のアクションRPG。
『ドラッグオンドラグーン』シリーズ、『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』を前提にしているが、これらの作品をやっていなくとも何も問題なく楽しめる。前作のニーアを知っているとハッとするような演出はあるが、特に気にせずに『ニーア オートマタ』から遊ぶのがいいだろう。
まず、この『ニーア オートマタ』というゲームは、周回プレイを前提として作られている。
エンディングが「A」から「Z」まであるのだが、実質的には「A」から「E」までの5種類のエンドがある。(「F」〜「Z」のエンドは、途中でゲームオーバーになってしまった場合に発生する小ネタのようなもの。)
つまり、「5回目の「E」エンドを見ればゲームクリア」という構成になっている。
1周クリアしただけではよくわからず、5回エンドを見なければ価値がわからない。そう聞くと、「めんどくせえ」とか、「同じ作業を繰り返さないといけないのか」と思われるかもしれないが、実際はかなりスムーズに進行していく。
ネタバレになってしまうので詳しくは話せないが、エンディングが5つあるからと言って、何度も同じことをするハメにはならない。
「E」エンドまでやったとしても、同時期に発売されたコンシューマーゲームと比べて、クリアのみに必要な総プレイ時間は短めだろう。
ストーリー重視のゲームなので、それほど自由度は高くないものの、オープンワールド風で様々なサブクエストを受けることができるので、それなりに開放感のあるゲームシステムにはなっていると思う。
少なくとも、「息が詰まる一本道のストーリーを何度もやらされる」といったような苦行にはならない。
他にはない感じでゲームが展開していき、斬新だが、ストレスなくプレイできるような配慮はかなりされているように思う。
世界観:100点

『ニーア オートマタ』で特筆すべきは、その唯一無二の世界観だろう。
もちろん、世界観といったものは評価が難しく、つまるところは個人の好みだ。
だが、ニーアのような表現は洋ゲーにはまずできないだろうし、海外で高く評価されているのも納得できる。
まず2Bをはじめとするアンドロイドのビジュアルがたまらないし、ボーカル付きのインタラクティブなBGMが神がかっている!
ゲームの世界観は、単にビジュアルイメージのみで決まるものではなく、操作性やストーリーも込みで考えるものだと思うが、その様々な点を加味しても、『ニーア オートマタ』の世界観は素晴らしい。
真似できない独自性のある表現を獲得し、それが多くのプレイヤーを魅了しているといった点において、満点という評価をしても問題ないように思う。
もちろん、好みは分かれるし、賑やかで楽しげな感じとは程遠いので、このような世界観を受けつかないような人もいるだろう。
最高に素晴らしいが、万人向けとは言えない。
ストーリー:95点

ストーリーに関しては、「E」エンドまで見て、本当に感動したし、心の底から最後までやってよかったと思えた。
不満点が無いゲームとは言えないが、ストーリーの素晴らしさは、マイナスの体験すらプラスに転じさせるほどだ。
実際に自分がプレイしてこその、ゲームだからこそ味わえる、最高水準の物語を体感できるだろう。
一方で、設定が複雑で不親切なので、人によってはキツい。
ゲームのムービーやキャラクターのセリフだけでなく、ゲーム内のテキストをしっかり読み込まないと理解できない。あるいは、ちゃんと文章を読んでもよくわからないような、プレイヤーに投げかける系の物語にもなっている。
ぼんやりとゲームをしていては、結局どういう話だったのかわからなくなってしまう人もいるだろう。
ゲームでしか不可能なストーリーではあるのだけど、だからこそ、ややこしい設定が苦手な人、考えながらゲームをプレイしない人は理解できないかもしれない。
アクション:60点

とても爽快感のあるアクションで、気持ちよく戦えるように作られている。
アクションが苦手な人でも楽しく戦闘できるような仕組みになっているのはグッド。
ただ、やり込むに値するほどのアクションゲームにはなっていないように思う。判定やカメラの移動などのクオリティは、ストーリーや世界観の水準と比較して良くできているとは言えない。
また、「アクションゲーム」の部分と「シューティングゲーム」の部分があり、通常の戦闘は楽しいのだが、シューティングパートはかなり冗長に感じてしまう。
難易度調整が可能で、強い敵と戦うこともできるのだけど、その場合はひたすら敵が固く(HPが多く)なる。
だから、ミスをしないように単調な作業を繰り返すだけで、アクションゲームとしての面白さがあまりない。
「マリオ」や「ゼルダ」など任天堂の人気タイトルや、「ソウルシリーズ」などのフロム・ソフトウェアの作り込まれたアクションと比較するなら、優れたアクションゲームとは言えない。
ただ、動きはめちゃくちゃかっこいいし、世界観にもマッチしているので、これはこれで十分にアリ。
「演出は最高だが、操作性はそれほど良くない」という評価。
ゲームバランス、作り込み:50点

素晴らしいゲームだが、全体的に作り込まれているとは言えない。
バグに関しては、アップデートでずいぶん直されているだろうし、今から始める人は気にする必要はないと思う。
ただ、マップの仕様や構造、UIなど、細かいところで不満に思うところは少なくない。
難易度は選択可能かつ好きなときに変更することができ、アクションゲームが苦手な人でも得意な人でも楽しめる、というふうにはなっている。
ただ、難易度を上げても、単に敵が固くなってミスができなくなるだけなので、アクションが得意な人が楽しめるものにはなっていないと思う。
また、シューティング要素がかなりゲームに取り入れられているが、特にゲームとして面白いとは思えず、開発者の独りよがりな印象を受ける。
経験値稼ぎやチップ集めや釣りなど、やりこみ要素もあるが、アクションの部分がしっかりしていなければモチベーションが湧かない。
あくまで演出、世界観、ストーリーを楽しむゲームといった感じ。
全体の作り込みは甘いものの、そのぶん演出やストーリーに圧倒的な売りがあるので、それで問題ないということなのだろう。
総合点:75点
世界観、ストーリーは間違いなく素晴らしいが、おすすめできるかと聞かれると、「かなり人を選ぶゲーム」という回答になる。
「100点のゲームだ!自分の中のベストゲームを更新した!」と言う人もいれば、「なんだこれ?、最近のゲームって酷いのばっかりだな」という感想になる人もいるだろう。
- 今までやったことのないタイプのゲームを遊びたい
- 鬱になるような描写や物語が苦手ではない
という人には間違いなくおすすめできる。
しかし、「普通に面白いゲームをやりたい」人におすすめできるかと言うと、けっこう微妙な感じだ。
「ニーア オートマタ」は海外で非常に高く評価されるゲームとしてさらなる名声を得たが、日本的な感性が外国に響いた一例であり、基本的には色物扱いだと思う。
ビジュアル、サウンド、演出、ストーリーは世界的な傑作の評価に値するが、アクションや操作性も含めた総合的なクオリティはそれほど高くはない。
また、「プレイヤーに求めるものが多すぎる」のと、「悪ノリが強すぎる」というのが大きな欠点だと思う。不必要に気分を悪くさせてしまう描写が多いように感じるし、慣れていない人がこれをやるとゲーム自体を嫌いになってしまいそうだ。
個人的に、「コンシューマーおじさんの感性で作られているゲームだな」という感じがした。訓練されて目が肥えている人はとても深く感動するが、初心者がこれをやると、大作ゲームそのものを敬遠する人が増えてしまうかもしれない。
「コンシューマーおじさん」である自分は楽しめたが、これをやって嫌な気分になる人がいることも想像できる。
良くも悪くも、ヨコオタロウ(ディレクター&シナリオ担当)の作家性が強く反映されたゲーム。カリスマ的な存在がいなければ成り立たなかった作品で、それゆえの利点と欠点を併せ持っている。
ヨコオタロウが手がけたからこそ、最高峰の演出とストーリーが可能になったのだし、その半面アクションRPGとしてはそこまで楽しめないものになっている。
癖が強すぎるので、万人にはおすすめしにくく、俺が編集した「プレイステーション4ソフトのおすすめランキング」でも、それほど順位は高めにしていない。
ただ、ハマる人にはめちゃくちゃハマるので、他にもAmazonレビューなども参考にして、自分に向いていると思ったのならやるべきゲームだろう。
わりとも酷評してしまったが、俺は『ニーア オートマタ』の大ファンで、コンサートも先行抽選に応募した(当たらなかったが)。
以上、ここまでネタバレ無しのレビュー。
これ以降はネタバレ有りで「E」エンド後の感想を書いていくので、クリアした人だけ見ていってくれ!
ニーア オートマタのレビュー(ネタバレ有り)

操作キャラに感情移入できるゲームならではの演出・ストーリーが本当に最高だった。
2Bが殺されたときの喪失感はハンパなく、9Sにガッツリ感情移入した状態で3週目以降のストーリーを進める。(9Sのメモリの中が2Bの画像ばっかりだったのはキモくて笑った。)
かなり良質な「どんでん返し」を味わえるストーリーで、「まさか最後に自我を持ったBOTが!」という驚きは最高。
BOTが自我を持ち始める伏線がちゃんとあったのもスゴい。
A2がBOTを撫でる仕草が最高に可愛い。「推奨:定期的な実施。」も納得。A2があまりにも優しすぎて好きになる。
どんでん返しで一番ビックリしたのが、2Bが本当は2Eだったこと!
「記憶喪失」というサブクエストがあり、ヨルハ機体にE型がいることが明らかになったが、まさか2Bがそれだったのは!
この事実を知った後にゲームをもう一度見ると、全然違うものが見えてくるというのもスゴい。
ゲームに慣れたオッサンが、久々に心の底から感動できる神ゲーだった!
ただ、褒める気にならない部分もけっこうあって、一番は「あまりにも救いのないクエストが多くないか?」ということ。
パスカルのクエストの結末など、単に嫌な気分になるだけだし、結局のところ何がしたかったのか疑問だ。
このゲームには、最後にセーブデータを消す演出がある(これはレプリカントから)。ニーアオートマタのストーリーは素晴らしいが、ゲーム内容とセーブデータを消すことにそれほど強い関連があるようには思えなかった。
あまり必然性がなく、「セーブデータを消す」ことで何かスゴい演出をしているみたいな感覚が、正直なところ寒いと思ってしまった。少なくとも、このようなものをもてはやすべきではないように感じる。この手の過激さをもてはやすと、長期的に見ればユーザーには見限られることが多い。
能動的に意見を書く人が発信するネットには素晴らしいゲームだという感想が多く出回るし、ゲーム好きのライターが書いているレビューでは絶賛されがちだが、嫌な気持ちになってゲームをやめた人の意見はなかなか出回らない。
その意味で、「ニーア オートマタ」は、なかなか人に薦めにくいゲームになっている。
もちろん、「ドラッグオンドラグーン」から続くこのシリーズはもともとそういうゲームで、開発陣はただ純粋に素晴らしい仕事をしただけだが。
ニーアオートマタは、「海外から評価された神ゲー」ではなく、「コアゲーマー向けの名作」という位置づけが適切に思える。
このようなゲームが世に出るのは間違いなく素晴らしいことだが、鬱ゲーをもてはやすのはゲーム業界にとってよくないとも思う。
正直、自分はこのゲームでメンタルにけっこうなダメージを受けて、それは作品の持つ力が大きいということでもあるのだけれど、「万人におすすめしちゃダメだ」という気持ちもある。