自分は、「冨樫義博」先生の『HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)』を、世界最高の漫画だと思っている。
伏線がスゴいとか、ストーリーが感動するとか、そういうところもあるけど、それ以上に突き抜けた部分があるのではないか、ということで、今回は、『HUNTER×HUNTER』の何がスゴいのかを考察する記事。
コミックス最新刊までのネタバレを含むので、まだ『HUNTER×HUNTER』を未読という方は、ここでブラウザバックしてほしい。
『HUNTER×HUNTER』は、第1話なら、ジャンプ公式サイトなどの無料お試しで読むことが可能だ。
『HUNTER×HUNTER』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
ひとつのシーンの背景が膨大
本当にオリジナリティのある優れた漫画って、「描かれていない」けれど、想像する余地がたくさんあると思う。
「世界観がある」と言えばいいのだろうか?
『ONE PIECE』だったら「こういう海賊もいそうだな」とか、『NARUTO』だったら「こういう忍者もいそうだな」とか、そういう妄想が捗るのが、優れた世界観を持った漫画だと思う。
『HUNTER×HUNTER』も間違いなく、世界観のある漫画で、「こういう念能力がありそうだな」とか、そういう妄想をいくらでもすることができる。
それに加えて、『HUNTER×HUNTER』に関しては、ひとつひとつのシーンが、その膨大な世界観を裏付けているので、読めば読むほど発見がある。
例えば、ヒソカが投げたコルトピの首を、シャルナークが受け取ったシーン。

何気なく読み流していたシーンだけど、よく考えれば、ヒソカの念能力は「バンジーガム」だから、無意識にキャッチしてしまったら、ガムの性質で手を離せなくなり、ゴムの縮む性質で頭に手が固定されてしまうから、両手が使えなくなる。
まあそれを抜きにしてもシャルナークはヒソカにやられていたとは思うけど、ヒソカが投げたものを反射的に受け取っただけで、かなり状況は不利になるし、そう考えると、ヒソカの「バンジーガム」って、シンプルだけどめちゃくちゃ厄介な能力だなとか、そういうことを何度も読み返して気づいたりする。
いちいち言葉で説明されるわけではなくとも、ひとつのシーンから連想される背景が膨大で、読む人によって、何度も楽しめる漫画なのだ。
設定のオリジナリティと汎用性
『HUNTER×HUNTER』の中でも特徴的なのが「念」の設定だが、もちろん架空の設定なのだけど、ファンタジー世界の魔法みたいな無根拠のものではなく、現実と地続きになっている。それゆえに、架空のものとは言え、リアリティと納得感のある土台があるように思える。
念には6つの系統……強化系、放出系、変化系、操作系、具現化系、特質系があるのだが、テレビとか見てるときに、「この人は○○系かな?」みたいな妄想が捗る。
六角形の図があるとしたら、上半分(強化、放出、変化)が陽キャで、下半分(操作、具現化、特質)が陰キャで、テレビに出てるタイプは上半分が多いように見えるし、そういうところも良く出来てるな〜って感じがする。
「自分は何の系統だろう?」と考えるのも楽しいし、念を使えるならどういう能力を考えるかな……という妄想も捗る。
少年漫画的なファンタジーでありながらも、リアルと地続きの妄想ができるという点でも、『HUNTER×HUNTER』は頭一つ抜けた質の高さがあると思う。
再編集から生まれる圧倒的な独創性
『HUNTER×HUNTER』って、舞台設定がとにかくスゴい。
ゲームの中に入り込む「グリードアイランド」、人間と他の動物をミックスさせてしまう「キメラアント」、「暗黒大陸」に向かう巨大な船の中で行なわれる「王位継承戦」と、物語が展開される土台の作り方がとにかく独創的。

ひとつひとつのパーツは、それほど珍しいものではない。ただ、それらを編集して形になったものは、他の作家では到底なしえないような独創性に満ちている。
「念」「カードゲーム」「修行のために作られたゲーム」「現実ではありえない景品」などなど、複数の要素が組み合わさり、噛み合うことで、『HUNTER×HUNTER』ならではの世界観が形作られる。
「キメラアント」編にしても、単にキメラを使うのではなく、そのキメラに前世の記憶が入り込んでいたりするから、あれほど複雑かつ感動的なドラマが生まれるのだと思う。
「冨樫義博」は、インプット量がとにかくスゴいという話をどこかで見たことがあるが、そのような膨大な知識が再編集されて、圧倒的なオリジナリティを持つものになっているように感じる。
漫画というジャンルではないが、「宮崎駿」や「村上春樹」にも、似たようなところがあると思う。
小説では絶対にできない「読み物」
最近の『HUNTER×HUNTER』を見て思うのは、「登場人物がめっちゃ多い!」こと。
盲目的なファンと自認する自分としても、「こんなにキャラが出てきて収集つくのか?」と不安になる。






でも、こういう人物の多さも、「漫画」というメディアだからこそ許されるのかな、とも思う。
小説でも、レフ・トルストイの『戦闘と平和』などは、登場人物が559人出てくるらしいが、そんなの今じゃ読めたものではない。
「漫画」の場合は、「とにかくたくさんいる」というのがパッと見るだけでもわかるし、数が多いほど脳のリソースを食う、という感じにもならない。
それでも、さすがにここまでたくさん出ると、「多すぎぃ!」となるが、冨樫先生には、それをやるだけの何かしらの必然的なアイデアがあるのだろうという信頼がある。
ここまで多くのキャラが入り乱れて、いったい何が起こるのか、もう期待しかない!
以上、天才の所業を解説しようとするのもおこがましい話なのだけど、「とにかくハンターハンターはスゴい!」という話でした。
昔は、「自分が生きているうちに完結するのを見たい」という感じだったのだが、今は「少しでも多くの話数を見たい!漫画表現の最前線を押し拡げてほしい!」という、健気な女の子みたいな心境になってきた。
冨樫先生には、健康に気をつけて描き続けてほしい。
当ブログでは、「おすすめの漫画ランキング」のような記事も描いているので、よかったらそちらも見ていってくれ!
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