『幽遊白書』で『HUNTER×HUNTER』で知られる天才漫画家「冨樫義博」だが、実はふたつの代表作の間に、『レベルE』という隠れた名作を描いている。
少年ジャンプ連載の作品でありながら、月1での連載が許されていた作品だ。(『HUNTER×HUNTER』もこの形式でやればいいんじゃないの、と思わなくもない)
『レベルE』は、コミックスにして全3巻(後の文庫本では上下2巻)で完結するジャンプコミックスとしては短めの作品だが、ファンからは根強い人気を誇り、実はアニメ化もされている。
短い巻数で終わり、マイナー漫画の部類ではあるが、めちゃくちゃ面白いし、読む価値はある。
現在は、「ジャンプ+」の公式サイトで、第1話を無料試し読みすることができる。
好きなものを描いた感があって楽しい
一度『幽遊白書』で揺るがない地位を手に入れたからか、月1の連載だし、肩の力を抜いて描かれている感じがする。
「のびのびと好きなものを描いた」感があって、それが魅力的だ。
野球の選抜で、山形(冨樫先生の地元)に来た高校生の元に、宇宙人がやってくるところから始まる漫画だが、野球、ゲーム、SFなど、好きなものが自由に詰め込まれていて、とても楽しい。
文字の説明も遠慮なしに多い。本当に「好きなようにやってる」という感じがする。

基本的にギャグなのだが、シリアスなシーンもあるし、ギャグもシリアスも、「やっぱ冨樫って天才だわ」というクオリティ。
仮に、「冨樫義博」というネームバリューがなかったとしても、カルト的な人気を博していたであろう漫画だ。
『HUNTER×HUNTER』につながるものが多い
『レベルE』を読んでいると、『HUNTER×HUNTER』につながるような内容が多い。
というか、「グリードアイランド」や「キメラアント」のベースになるような発想は、この時点ですでにあったことがわかる。

「ゴン」みたいなキャラクターも出てくるしね。
「冨樫義博」ファンであれば必読の漫画だ!
あとあと読み返して「すげーな」と思うところも
『レベルE』の話の中に、「マクバク族」が地球にやってくる回があるのだけど、生態系やDNAについて、わりとややこしい話が展開される、SFが強めの内容だ。
その中で、解明されていない遺伝子配列を「ジャンクDNA」と呼ぶことに対して、作中人物が苦言をていするシーンがある。

のちに、ジャンクDNAがガラクタでないことがわかってきたのだけど、『レベルE』が1997年に完結したことを考えると、けっこうスゴいことなんじゃないかって思う。
まあ、「ジャンクDNA」という呼び方に疑問を投げかける意見は当時もあったのだろうし、それを援用しただけかもしれないが。
『HUNTER×HUNTER』にも、コアラがカイトに懺悔するときに、肉体と魂、小ささとエネルギーについて、何か難しげなことを語っていたシーンがあったけど、ああいうのも、どうやって思いついたのだろう?
天才ゆえの直感なのだろうか?
だとしたら、あとあと冨樫先生のシーンを裏付けるような事実が解明される可能性もあったりするかもしれない。
文庫本のあとがきに、ちょっとした恨み言が

『レベルE』は、のちに上下版(文庫版)が出て、電子書籍に対応していたから買ったのだが、「あとがき」で、冨樫先生がジャンプ編集に対してちょっとした恨み言のようなものを書いている。
『レベルE』は、「比較的好き勝手に描けた」から、「他の作品に比べて居心地はそんなに悪くない。」とのこと。
じゃあ『幽遊白書』や『HUNTER×HUNTER』は?……となるけど、まあ尖った才能を持った人だけに、編集部とはいろいろあったのかもしれない。
邪推してもあまり楽しいものではないのでやめておく。
以上、『レベルE』を手短に紹介してきたが、挙げきれないほどの魅力がある漫画だ。
文庫版は、電子書籍にも対応しているし、値段も安いので、気になった人はおすすめ。
ちなみに、冨樫先生は、『HUNTER×HUNTER』『レベルE』『幽遊白書』の前には、『てんで性悪キューピッド』という、ジャンプの「お色気枠」で連載デビューを果たした。
残念なことに、コミックス4巻ぶん、1年足らずで打ち切りになってしまったのだが、もし『てんで性悪キューピッド』の連載が続いていた世界線があったなら、天才エロ漫画家としての冨樫先生の作品が見られたかもしれない。
当ブログでは、「おすすめ漫画ランキング」も書いているので、よかったら以下の記事もぜひ。
コメントを残す