新井英樹『愛しのアイリーン』人生の悲哀を壮絶な迫力で描ききった傑作

自分が「新井英樹」という漫画家を知ったのは、「佐藤秀峰」が自分のブログで言及していたのを読んだのがキッカケだ。

僕が「漫画家として影響を受けた作品をひとつだけあげろ」と言われたら、迷いなくこの「宮本から君へ」をあげます。

と言っている。そこから「新井英樹」先生の作品を色々と読んでいった。たしかに、「佐藤秀峰」の原点になるものが詰まっていると思った。作風がめちゃくちゃ似ている。

ていうか、「佐藤秀峰」はまだマイルドなほうで、「新井英樹」のほうがエグみが強い。一般人受けはしないだろうと思う。

個人的に、「新井英樹」先生の作品の中で一番おすすめなのが、『愛しのアイリーン』だ。

1995〜1996年に「ビッグコミックスピリッツ」で連載された漫画で、2018年には実写映画化もされている。

『宮本から君へ』や『キーチ!!』と比べて、巻数が短いが、構成がしっかりしていて読みごたえがあり、コミックスの巻数は6巻だが、「上下巻」の新装版は2冊で済むし、価格も安め。

42歳のモテない中年男性が、フィリピーナを嫁にもらう

主人公の「岩男」は、42歳独身で、田舎で農家を営む両親と同居し、パチンコ店の店員として働く。

職はあるものの、社会的な地位が高いとは到底言えず、顔もブサイクで、女性にはモテない。そして性欲を持て余している。

「40過ぎてそんなに性欲があるものか?」と思うが、今ならわかる。男は40を過ぎてもけっこう性欲がある!

「岩男」は、失恋などで自暴自棄になり、300万もの費用を国際結婚斡旋所に支払い、フィリピン人の「アイリーン」を嫁にもらう。

並の漫画であれば、国際結婚による様々な問題を描き出すようなシナリオでも、そのフィリピン人嫁はなんだかんだで若く美人だったりするだろう。

しかし、この漫画はそんなに甘くはない。「アイリーン」というフィリピン人は、18歳の処女なのだが、まるで獣のような振る舞いをする、アグレッシブな女性だ。その素行には、リアリティがありつつ、大金を出して異国の女を貰うことの悲しみに満ちている。

「少子高齢化」や「外国人妻」というような社会問題を扱っているということで、評価が高まり、映画化もされているが、そういうことでもない気がする。

「新井英樹」先生ならではの、言語化するのも難しいような「エグさ」が、この漫画にはある!

 

心をエグってくる

「岩男」の親は、後継者を望んではいるものの、フィリピン人の嫁を貰うことを「恥」と考え、「岩男」の結婚に激しく反対する。

ストーリーのネタバレは避けるが、「なんだかんだでいい夫婦になりました」みたいな、大団円に向かうわけではない。

よくここまで、嫌悪感を催すキャラ、凄惨で救いのないシーンを描けるものだな、と感心する。

常識的な感覚ではこういう作品を作れないと思うし、とにかく、作者の感性と勢いに圧倒される。

これが「連載作品」だった、というのがとんでもないことのように思える。

 

内容を超えた強烈な作品性

「リアリティのある悲惨な話」には、今の自分を肯定してくれる効果や、「もっと頑張らないと」という建設的な努力に向かわせてくれる効果があると思う。

例えば、映画『ショーシャンクの空に』とか、漫画『闇金ウシジマくん』なんかは、そういう「効用」を持った作品という面もあるかもしれない。

その点で、『愛しのアイリーン』もそうかもしれない。まともな恋愛をしてくなるし、そのために頑張ろうと思わせてくれる。

ただ、そういう単純な効果とは別に、強く胸を打つ作品性もある。

読んでいて楽しくはないけど、「読んでよかった」と思わせてくれる、深い読後感のある漫画だ。

間違いなく万人ウケはしないだろうけど。

ていうか、「新井英樹」先生の作品はどれも「よくこれが長期連載できたな」と思うくらい万人受けしないような作風だ。これはディスってるわけではなく、むしろ称賛されるべきだと思う。エグい作品性を認めて支えてきた読者を獲得していたということでもあるからだ。

 

あの「佐藤秀峰」も大きな影響を受けた、唯一無二の作風だと思うので、気になる人はチェックしてみてほしい。

 

のちの連載も、作風がブレることがないが、『キーチ!!』とかに関しては、幼稚園児が主人公だからか、自分は途中でギブアップしてしまった。

 

以前書いた、「佐藤秀峰」先生『ブラックジャックによろしく』のレビューはこちら

佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』をレビュー!「職場にこんなヤツいたら嫌すぎる!」を描く医療漫画

2019.10.20

 

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「おすすめの漫画ランキング」をすべて感想&レビューつきで紹介【2019年】

2019.10.24

 

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