『彼方のアストラ』は、『SKET DANCE(スケット・ダンス)』をジャンプ本誌で連載していた「篠原健太」先生が、ジャンプのWEB雑誌版である「ジャンプ+」で連載していた、SF冒険ファンタジーだ。
短いのに、壮大なストーリーで、完成度が高い。
コミックス第5巻で完結し、アニメ版も全12話の1クールでキッチリ完結している。
もちろん打ち切りではなく、最初からゴールが意識されていて、伏線もしっかりあるような、ミステリー小説レベルの完成度の漫画。
ジャンプの連載作品で、ここまで短く、なおかつ完成度の高い作品はなかなかないと思う。
ジャンプにしては珍しい、最初から「結末」を意識して作られた作品
週刊連載の漫画は、あまり完成度や整合性を意識して描かれない。
特に「ジャンプ」は、読者アンケートによって連載を継続できるかどうかが決まるので、「1話ごとの面白さ」が重要になる。
「全体の完成度」の評価の以前に、「途中が面白いか?」が作家にとって、生き残れるかどうかのもっとも重要な要素だ。
このルールが悪いとは言えない。実際のところ、少年ジャンプは優れた名作を生み出し続けてきたからだ。
しかしそれだけに、ジャンプ作品では、「少ない巻数で、完成度の高い作品」というのが少ない。『彼方のアストラ』は、そういう意味では、例外的な作品と言えるだろう。
このような企画が可能だったのは、「篠原健太」先生に、『スケット・ダンス』(全32巻、ジャンプ本誌で連載された超人気学園コメディ)という巨大な実績があったからかもしれない。
「ワクワク」と「明るさ」で構成されているので、読んでいて楽しい
ハラハラドキドキする、サスペンス的な内容なのだが、全体的に明るくて、楽しく読める。

「さすがスケット・ダンスの人だ!」と思うくらい、ギャグシーンが適度に盛り込まれていて、暗い気持ちにならない。
絵も見やすく、テンポもよく、シンプルに漫画が上手い。

今作は、主人公たちは学生なのだが、舞台は「宇宙」で、宇宙船に乗って様々な星を漂流する。
『スケット・ダンス』の学園モノとはまた違ったテイストの、冒険ファンタジーだ。
SFとしては好みが分かれるかもしれない
評価が分かれそうな点を言えば、SF的な設定の部分だ。
SFを大雑把に2つに分けて
- 「とにかく面白ければいい!俺の宇宙はこうなってるんや!」タイプのSF
- 「学術的な知識を駆使して、考察可能なアイデアを楽しむ」タイプのSF
があるとすれば、『彼方のアストラ』は前者の「面白ければいい!」に極振りみたいな感じだ。
だから、「SF的なアイデアとしての面白さ」や「SF的なリアリティ」を重視する人からすると、ミスマッチがあるかもしれない。
SF漫画というよりは、冒険ファンタジーとして読むほうが、不幸なすれ違いは起こらないと思う。
SFという壮大な舞台を使いながら、SFにありがちな堅苦しさがまったくない、「良い意味でSFらしくない」作品だと思う。
完成度が高く、感動する
ストーリーに関しては、ネタバレになってしまうので何も言えない。
明るいながらも、ハラハラするようなサスペンスになっているし、途中で、「これって、そういう話だったのか!」という驚きがある。
でも、そういうのを色々含めて、めっちゃいい話だった!

ネタバレ無しだと、「いい漫画なので読んでほしい!」としか言いようがない。
「あちこち高く評価されているのも納得」という感じの傑作で、期待を裏切らないと思う。
「ジャンプ+」の公式サイトで、第1話を無料で読むことができる。
アニメは、ニコニコ動画の公式チャンネルで、第1話の前編を無料で見ることができる。
「アニメ」もクオリティが高いし、ちゃんと1クールで完結するので、アニメを見るのもいいと思う。
Kindle漫画では、「全巻合作本」というのも出ている。
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